昔ながらの手仕事でつくる、海上天日干しの干物
馬場水産加工場
馬場 雅巳さん
「もともと、父ちゃんがこのスタイルだったからね。全部手で開いて、天日干し。全部、手作業。」
無添加・手づくりにこだわり続けて29年。丁寧に、実直に、ここにしかないものを届ける馬場水産加工場。今回は、二代目の馬場雅巳(ばばまさみ)さんにお話を伺いました。

上甑島・里で育った雅巳さん。島立ちを経て、大学で経営を学び、鮮魚の卸問屋に勤めていました。その後、1997年に雅巳さんのお父さんが水産加工場を開業したことをきっかけに帰郷。本土で得た鮮魚の扱い、経営の知識、商売人としての経験を生かし、この島だからこそつくれるものづくりにこだわってきました。
「昔は、この護岸一帯にやぐらが並んでいて、一家に一台あったね。」と話す雅巳さん。里の風物詩でもあった海岸のやぐら。現在は、漁に行く人も干物を干す人も減ってしまい、馬場水産加工場のある集落では、このやぐらが最後のひとつとなっています。台風による被害を受けつつも、父の時代から幾度かの修繕を重ね、現在の姿に至ります。

雅巳さんの目利きによって仕入れられた新鮮な魚介類。この日、やぐらに並んでいたカマスは150尾以上。朝から一尾一尾、手で捌かれたカマスは、頭の形がきれいに残っています。機械で魚を捌く場合、頭まで二つに割れてしまいますが、馬場水産加工場では、すべて手開き。だからこそ、片開きの美しい形に仕上がります。
干し場で行う最後の仕上げは、雅巳さんの仕事。一尾一尾、姿を整えます。贈答用にも選ばれる干物だからこそ、お客さんの手元に届く瞬間まで気が抜けません。

馬場水産加工場のロングセラーは「海上天日干し カマスの干物」です。塩加減がちょうどよく、ふっくらとした仕上がり。山下商店の運営する宿「FUJIYA HOSTEL」でもファンの多い逸品です。
干し場のすぐ真下にある加工場では、雅巳さんのご家族や地元のお姉さま方が手際よく、豆アジやキビナゴの下処理を進めています。

カマスの内臓部分も無駄にはしません。上甑島では、昔からカマス漁が盛んで、大漁の日には漁師さんからたくさんのお裾分けをいただくことも。そんな時には、保存食にもなる「塩辛」をつくるのが慣わしでした。酢や橙果汁をかけて、塩辛さを好みに調整して食べるのも甑島流です。


「島ではやらないけれど、(島外のお客さんは)お茶漬けにする人もいるみたいよ。」と、美味しそうな塩辛の食べ方も教わりました。
休む間もなく、作業は続きます。
太陽に照らされた干し場に戻ると、雅巳さんの弟さんがキビナゴの干し具合の確認をしていました。やぐら一面に広がるキビナゴを見て、「まだやい」と一言。ただ時間に任せるのではなく、魚の状態をこの目で見て判断する。途中で干し具合にムラが出ないよう、一度混ぜる工程を経て完成します。


昔ながらの風物詩であるやぐらの姿を、今に残す馬場水産加工場。
手開き、天日塩、天日干し。
太陽と潮風、そして人の手でつくられる甑島の干物を、ぜひ味わってみてください。
